プトレマイオス2を真っ直ぐ狙う巨大MAに、一気に体温がサッと下がった気がした。


あそこには、マリーが乗っているのに!!


そう思った瞬間、無我夢中で巨大MAにビームサーベルを振るっていた。

マリーを守る為に、戦おうとした。
マリーは、僕が守らなきゃいけないんだ。
そう、約束したから。

なのに、


「・・・ど、どうして・・・、」


まさか、マリーを守るために攻撃した相手が、君だったなんて、


「どうして、が・・・!?」


アレルヤはそう思いながら、金と銀の瞳を揺らした。















・ルーシェを保護した。

刹那の報告は、プトレマイオス2、そしてマイスター全員に通信で知らされた。
ボイスオンリーと表示されたそれだったが、全員は其々歓喜の声を上げた。


って・・・本当なのね!刹那!!」

「無事だったのか!!」

「良かった・・・!」


スメラギ、ラッセ、フェルトも安堵の息を吐く。
その人知ってるです!とミレイナも明るく声を上げた。

ティエリアも「だと!?」と最初こそ驚きの声を上げていたが、すぐに「そうか、良かった」と言い笑みを零した。

、という名を聞いてアレルヤは最初こそ喜んだ。
しかし、ふと気付いてしまった。

今、自分が攻撃した機体から、彼女は刹那から救出された。

爆発をする、機体から。


「・・・ぼ、僕は・・・!」


下手をしたら、彼女を殺してしまうところだった!!

その事実が、アレルヤの心に重くのしかかった。





帰還しようとするダブルオー。

アロウズのアヘッド、GN−XVは邪魔をするかと思ったが、何もしかけてこなかった。
そのままいつの間にか去っていた空母に戻るのか、3機共飛び去っていく。

刹那はそれに疑問を抱きながらも、兎に角を第一に考える事にした。
通信をプトレマイオス2へ入れ、レーゲン、と医療担当の彼を呼ぶ。


は怪我をしている、用意しておいてくれ」

『もう出来てるって』


マリーも手伝ってくれたんで。
そう言うレーゲンに「そうか」と刹那は言いダブルオーを帰還させた、










『レイ、良かったの?』


帰還する中で、フレイの声が通信越しに響く。
それにレイは頷き、口を開く。


「・・・良いんだ。今はあれが最善だった」


を救う為には、アロウズに居続ける事は得策ではない。
心許せる相手が居る場所が、もうソレスタルビーイングしかないのなら、


「・・・ソーマ・ピーリスが居なくなってしまったんだ・・・」


それとも、と言いレイはブシドーの通信モニターに視線をやる。


「貴方が彼女の傍に居てくれるのでしたら、別でしたが」

『・・・私は、彼女の隣に相応しくない』


残念だがな。
そう言いブシドーは自嘲するように笑った。
「そうですか」と言いレイは遥か遠くまで既に撤退をした空母へ向かう。


「・・・報告は俺からする」

『立場が危うくなっちゃうんじゃない?』


フレイの言葉にレイは「構わない」と言う。
バレル隊は既に二人だけ。
亡くした部下についても色々問われるだろう。

そう思いながらも、レイは小さく息を吐いた。

どうせ亡くした部下三人はリントの息のかかった奴らだった。
構わない。

レイはそう思いながら、アヘッドのレバーを強く握った。


・・・シン、お前の救いたかった少女を、俺は救ってみせる


お前の為に。

これは、親友として、俺に出来る唯一なのかもしれない。





『返すのか? 』


酷く顔色の悪い、目の下に隈も浮かぶ少女。
そんな妹を支える、同じように今にも倒れてしまいそうな少女。

警備兵を殴って気絶させたシンの背後に、別の警備兵が迫った。
それを殴り倒した後、シンを見ずに言った。


『ああ・・・このままじゃ死んでしまう。その後も実験動物みたいに・・・、俺はそんなの!』


許せない。
そう言いたげに深紅色の瞳を振るわせた。
彼が戻ってくる事を確認し、手伝いを申し出た。
シンは意外そうな顔をしていた。
止められると思ったのだろう、彼女たちを逃がす事を。


『どんな命でも生きられるのなら生きたいだろう』


その言葉に、シンは彼女を支える手に力を込めた。
妹を支える彼女の空色の瞳が、微かに細められた。


彼女らを返した後、シンは隣の営倉内で「ごめん」と謝った。


『何がだ。お前に詫びてもらう理由など無い』


俺は俺で勝手にやった事だ。
そう言うと、彼は押し黙った。


『無事に返せたのか?』

『・・・うん』

『なら、良かったな』


そう言うと、シンは少しの間をおいて、ありがとうと言った。

その後に来た隊長が、シンにすまなかったと言う。


『彼女の事、君がそんなに思い詰めてたとは思わなくて』

『別にそんな思い詰めてたって訳じゃありませんけど。ただ嫌だと思っただけですよ。
 とステラだって被害者なのに・・・なのにみんなその事を忘れて、ただ連合のエクステンデッドだって・・・』


死んでもしょうがないみたいに。
そう言いシンは深紅色の瞳を細めた。

彼女らは確かに被害者だ。

歪んだ世界が、彼女たちを殺戮兵器に仕立て上げた。


『だがそれも事実ではある・・・。
 彼女たちは連合のパイロットであり、彼女に討たれたザフト兵も沢山いるということも事実だ』


理屈を述べるアスラン。
それにシンが反論する事は当たり前だった。


『でもは、ステラは望んでああなったわけじゃない!解ってて軍に入った俺達とは違います!』

『ならば尚の事、彼女は返すべきじゃなかったのかもしれない。自分の意志で戦場を去る事も出来ないのなら、下手をすればまた・・・』

『じゃあ!あのまま死なせれば良かったって言うんですか!?』

『そうじゃない!だがこれでは何の解決にも・・・!』

『あんなに苦しんで怖がってたステラを!自分だって辛かったのに、ステラを守ろうとしていた、を!』


シンはとステラを守りたかった。
生きていて欲しかった。

それだけを願っていた。





なのに、





うっすらと瞳を開ける彼女、涙で濡れた瞳を揺らす彼。

シンは震える唇で言葉を紡ぐ。


『・・・・・・どうして・・・どうしてこんな・・・』

『・・・シン・・・ど、したの・・・泣いて・・・』

『・・・・・・』


ベルリンの市街地を襲っていた巨大なMS。
デストロイの搭乗していたのは、記憶をなくし、恐怖状態に陥っていただった。

フリーダムに攻撃され、デストロイは大破した。

そして、中に乗っていたも・・・。


傷付き、行き絶え絶えな彼女を抱き、シンは涙した。
そんな彼とは反対に、彼女は柔らかい笑みを浮かべた。


『よか、った・・・シンと会えて・・・』

『・・・うん、俺も君に会えて、良かった・・・!』

『・・・シン、守ってくれて、あり、がと・・・』

『・・・守られてたのは、俺の方だ・・・!』

『ううん・・・シン、ずっと、守って、くれて・・・た・・・』


だいすき、シン。

ありがとう。


そう言い彼女は息を引き取った。


ミネルバに戻った後、シンは無心にフリーダムとの戦闘シュミレーションをした。

妹の方は無事だった。
しかし、姉の方はシンの腕の中で息を引き取った。
そのままもう誰もが手も介せないようにと、シン自らの手で湖に水葬した。

守りたかった。

守れなかった。

もう誰も手が出せぬようにと湖へ彼女を手放したのに、





「・・・今の俺に出来る事は、もう会えない友の為に彼女を守る事だ」


アロウズに居ては、もっと薬物を投与され、精神の操作も進む。
下手をしたら、精神汚染され、壊れてしまうかもしれない。

立てていた計画が、ソーマ・ピーリスが消えてしまい実行し辛くなってしまった。
そして、予定よりも早かった試作機の搭乗。

今、ソレスタルビーイングに返す事が最善だった。

再びそう思い、レイは眉を寄せた。















検査服を身に纏ったが、寝台に横になっていた。
ダブルオーのコクピット内で既に気を失っていた彼女は、そのまま治療された。

頭部に包帯を巻き、腕や足には包帯やガーゼがあった。
彼女のデータを纏めたレーゲンは瞳を細めていた。


「・・・これが、アロウズのやり方なのか・・・?」


そう呟き、カレルに現場を任せてメディカルルームを出た。
ブリッジに行くと、入り口でマイスターたちが集まっていた。
レーゲンは彼らの間を通り、ブリッジへ身を入れる。

瞬間、スメラギが振り返って「は!?」と問うた。
フェルトもラッセも、入ってきたマイスターたちも気にしていたようだった。


「・・・・ルーシェはエクステンデッドだって事はもう皆知ってるんだな」


レーゲンがそう言った所で、マイスターたちの後ろからイアン、沙慈、マリーも来た。
振り返らずに、レーゲンは口を開く。


「・・・酷いもんさ」


人を人と思っていない。
そんな言葉がピッタリだった。

レーゲンはフェルトにデータ端末を手渡し、モニターに映すように言う。
指示に従い、彼女がパネルを操作すると、モニターにの身体データが映し出された。

見ての通りだよ。
と、レーゲンは言葉を続ける。


「通常の人体に無い細胞物質が多量に投与された形跡がある。ナノマシンもな」

「・・・超兵と似たようなもの、ですか?」


アレルヤの問いかけに、レーゲンは「そんな感じだ」と言いパネルを片手で操作する。
次に、別のデータがモニターに映し出された。


「今の彼女は情緒不安定だ。脳波にも波がありすぎる」

「・・・まさか、」

「・・・きっと記憶を操作されてたんだろうな。どういう経緯かは分からんけど、4年間、アロウズに捕らえられてから、ずっと」


4年間、ずっと、
レーゲンの言葉に、アレルヤはショックを隠しきれない様子で壁に背をつけた。
そんな彼を、マリーが気遣わしげに見やる。


「脳量子波の干渉を受ける可能性も大きいんだが・・・」


そう言い、レーゲンもアレルヤを見やる。
マリーは「あの娘が・・・」と呟く。


、なんですね」

「・・・君は、アロウズで彼女に会わなかったのか」

「会いました。ソーマ・ピーリスは、ずっと彼女を気にかけていました」

「知っていたのか!?」


そこでティエリアが声を上げた。
彼女がアロウズに居ると、知っていたのか、と再度マリーに問う。
頷いた彼女に、ティエリアは真紅の瞳を揺らした。


「何故話さなかった!?彼女がソレスタルビーイングの一員だと知っていたんだろう!?」

は記憶を無くして不安定でした!それに、アロウズにも彼女を助けようとする人たちが居て・・・」


下手に話せないと、思っていました。
そう言うマリーを、アレルヤは唖然とした表情で見た。


「・・・僕は、どうして気付けなかったんだ・・・」

「・・・アレルヤ、」

「あの巨大MAに乗っていたのが、彼女だと・・・」


肩を落とすアレルヤ。
それを横目で見た後、刹那はマリーを見下ろした。


「・・・先々の戦いで、は機体・・・GN−Xに乗っていたか?」

「・・・はい。ずっとは、ソーマ・ピーリスの隣に居ましたから」


収監所にも、居ました。
そう言うマリーにアレルヤたちは驚愕の表情を浮かべる。
どこに、と呟いた直後、アレルヤはハッとする。

ずっとソーマ・ピーリスの隣に居た。

という事は、


「・・・まさか、」


収監所で自分に銃を向けていたパイロットスーツを身に纏っていた人物。


「・・・スミルノフ大佐と一緒に来た機体に乗っていたのも・・・!」


あの時の素早い常人離れした動き。
背を蹴り飛ばした、人物は、

マリーは瞳を細め、アレルヤから視線をそらした。


「・・・ええ、アロウズのGN−XVに乗っていたのは、よ」

「じゃあ、あの時光通信でアレルヤたちの居場所を教えてくれたのは・・・!」


ロックオンが驚きの声を上げる。
次に、レーゲンが口を開く。


「多分、その時に記憶を取り戻したんだな、一瞬」


まぁ、すぐ消されたみたいだけど。
そう言い脳波の乱れをモニターに映す。


「これから分かるが、精神操作をされてあんまり時間が経ってない事が分かる」


きっとさっきの戦いの中でも、精神不安定だったろうに。
可哀相に、と付け足してレーゲンに刹那は瞳を細めた。


「・・・俺が行った時、彼女は錯乱状態にあった」

「だろうな」


そう言いレーゲンは端末を引き抜いた。
彼女の大体の説明を終えた彼は、再度メディカルルームに戻ろうとする。
そんな彼を、アレルヤが呼びとめた。


「あの・・・僕もいいですか!?」

「・・・俺たちも、彼女の様子を見たい」


刹那も続いて言い、ティエリアたちが頷いた。
レーゲンは少し渋い顔をしたが、小さく頷いてくれた。





刹那たちがメディカルルームへ行くと、ガラス越しに寝台に横たわるが見れた。
の傍らには、彼女のイエローハロが寄り添っていた。

目を点滅させながらも、黙ったままずっとを見詰めている。

待っているんだ、彼女が目覚めるのを。
そう思いながら、アレルヤが一歩踏み出す。


直後、

が急に体を大きく震わせた。


そのまま苦しむように顔を覆った彼女に、慌ててレーゲンが近付く。


「おい、どうした!?」

「・・・ぁ、や・・・嫌ぁ!!」


ガラス越しに響く声。
頭を抑える彼女を支えるレーゲン。

突然の事にマイスターたちは不安げに表情を曇らせる事しか出来ずにいた。
!」と思わず彼女の名を呼びながらアレルヤがガラスに手をつく。


いやあああああああああああああ!!!


絶叫。

途端に強く叫びだした彼女が暴れだす。
レーゲンを突き飛ばし、入り口とは反対側にある壁のすみまで足をもつれさせながらも逃げるように移動する。


「や・・・!嫌、嫌!やめて!!」

・・・!」

私に入って来ないでぇ!!


頭を押さえ、背を丸くする彼女。
そんな彼女を見詰めながら、刹那は先ほどの彼女を想いだした。





『アレルヤ、だめ・・・、だめ・・・!』





まさか、と刹那は深紅色の瞳を震わせた。

突き飛ばされたレーゲンに、マリーとロックオンが駆け寄る。
ティエリアとアレルヤ、刹那も隣室へ入り彼女に近付く。
が、彼女は更に背を丸めると、来ないでと叫んだ。

思わず彼らの足が止まる。


「来ないで!私に・・・やめてぇ!


あからさまな拒絶に、アレルヤはショックを受けた表情をする。
が、すぐにまた彼女に近付き、両手を伸ばした。


!僕だよ、アレルヤだ!」


そう言いアレルヤがの両肩に手を置いた瞬間、


いっ・・・!
いやああああああああああああああああああ!!!!!!!!


頭に置いていた手を思い切り振るった。
それはアレルヤの頬に当たり、怯んだ彼をそのまま突き飛ばした。
「アレルヤ!」とティエリアが彼を支える。


「いやだ・・・いやだ・・・!」


ガタガタと体を大きく震わせ、彼女はか細い声で零す。


「いや・・・怖い・・・!怖いの・・・!!」

・・・!ここに君を傷つける人は居ない!」

いや!!


頭を振っては怯えきった表情を見せた。


怖い怖い怖い!!

頭に響く音が煩わしくてしょうがない!

何か、怖いものがここに居る!


は「いや、」と再度零してきつく瞳を閉じた。


「やだ・・・守る・・・言っ、たのに・・・!」


口元に手をやり、目じりに涙を溜める。
そんな彼女に、刹那は意を決したように近付いた。

足音にはびくりと肩を跳ねさせる。

カタカタと震える彼女の前にしゃがみこみ、刹那はゆっくりと手を伸ばした。

手袋が外された素肌のそれは、彼女の頬にそっと添えられた。

肩を跳ねさせた彼女は、空色の瞳を驚愕で見開く。


「・・・、俺が分かるか」


そう問う。
記憶なら戻っているはずだ。
なのに何故こんなにも彼女は怯えているのか。

精神操作のせいなのか。

それとも、

ある仮説が思い浮かんでしまい、刹那は少しだけ深紅色の瞳を細めた。

真っ直ぐに彼を見詰めたまま動かなくなった
彼女はひゅ、と息を飲んだ後、唇を震わせた。


「・・・ぁ、」

、」


開いている手で、彼女の手を包み込む。
そっと、は刹那の手を握り返した。

静まった空間。

全員が見守る中、刹那は再度「」と彼女の名を呼んだ。


「・・・もう、無理はするな」


しなくて良いんだ。
そう言った刹那に、は表情をくしゃりと歪ませると、倒れこむように刹那の胸に額をつけた。


「・・・ッ、刹那・・・!」

「ああ、俺だ」

「刹那、刹那、刹那だ・・・!」

「ああ。ここに居る」


顔をあげ、両手で刹那の両頬を包む。
涙が溜まった空色に、真っ直ぐ見詰められる。


「夢じゃ、なかった、」

「ああ」

「これは、ほんとうなんだ・・・!」

「ああ。夢なんかじゃない。俺もお前も、ここに居る」


そう言うと、は「そっか」と言い安心したように瞳を伏せた。
大人しくなった彼女を、刹那は抱きかかえた。

そのまま寝台に寝かせると、イエローハロが近付いた。


!』

「・・・はろ、」


力ない瞳で見返し、苦笑する。


「・・・ずっと、待っててくれたの?」

、イッタ、ロックオン、チガウ!』

「・・・うん、言ったね、戻るって、約束、した」


おまたせ。
そう言いは空色の瞳を細めた。
寝台に乗り、彼女の傍まで転がったイエローハロは、ぴったりと彼女の頬に球体をつけた。

落ち着いた様子の彼女に、レーゲンは素早くアレルヤ、ティエリア、ロックオン、マリーを外へ出るように促す。


「刹那はを見ててくれ」

「了解」


そう返し、刹那も彼女の傍らに寄り添う。
何か言いたげなアレルヤの背を、レーゲンは押しやった。

別室に移った彼らは、レーゲンを見た。


は、どうしたんです・・・?」


複雑な表情でそう言うアレルヤ。
レーゲンは小さく息を吐くと、彼を見上げた。


「今は安定したけどな」

「だから、どうしてあんなに・・・!」

「お前じゃないの?」


アレルヤの言葉を遮って、レーゲンが言う。
え、と短く声を漏らし、アレルヤは瞳を丸くした。


「お前が近付くにつれ、の症状が悪化した」

「・・・ぼ、僕が?」

「先の戦闘のせいか・・・それとも、別の何かが原因か」


そこまでは分からないけどな。
そう言いレーゲンは肩を竦めた。
何か心当たりは、とティエリアが問う。


「おいおい、昼ドラみたいな展開はよしてくれよ?」


ロックオンが茶化すように言う。
それにアレルヤとマリーが身を固くした。
そんな、と言いアレルヤは言葉を続ける。


「僕とマリーは、家族であり、仲間です!それ以上の関係なんて・・・!」

はそう思うかな」


レーゲンはそう言い、瞳を細めた。
彼の言葉に、ティエリアはある事を思い出し、「まさか・・・」と呟く。

4年前、トリニティに対して武力介入を行う為に地上に降りた。
その時、ヨハン・トリニティの言葉に傷付き、混乱したと刹那のやり取りを、思い出していた。





『・・・死なない?』


舌足らずな喋り方ではそう言った。
刹那は強く頷き、「大丈夫だ」と返す。


『お前には俺たちが居る。アレルヤだって居るじゃないか』


その名を出した途端、の表情が再度曇った。


『いや・・・アレルヤは、だめ・・・いやなの・・・』

『え?』


思わずロックオンと共に声をあげる。
普段からずっと一緒に居る二人。
とアレルヤはお互いを想い合っているものだと思っていた彼らにとって、その一言は意外なものだった。


『アレルヤ、だめ・・・私は代わり・・・だから、だめ・・・!』

『代わり・・・?』

『だから、だめなの・・・!!』


「だったら、」と言い刹那はの髪をぎこちない動きで撫でた。
ロックオンがよくしている行為。
これをすると、落ち着くはずだ。そう思って故の行動だった。


『俺が、お前を守ってやる』

『・・・え』


刹那は頷いた。


『お前は皆を守れ。その背は、俺とエクシアが守ってやる』


の空色の瞳が、みるみる大きく開かれていく。


『ガンダムで、お前を守る』


は大きく瞳を見開いた。
そしてそのまま、表情をくしゃりと歪ませると、崩れるように刹那に抱きついた。





「・・・は、自分は代わりだと言っていたな・・・」


ティエリアの呟きに、ロックオンが「代わり?」と零す。

刹那がを守ると言った。

そして、はアレルヤは駄目だと。
自分は代わりだと言った。

その事をティエリアは全員に伝えた。
「代わり、」と何か考えるようにマリーが瞳を細めた。
アレルヤは訳が分からないといった様子で戸惑いを見せていた。


「・・・一体、誰の・・・?」


そう零したアレルヤを、ロックオンとレーゲンは何やら考えるように横目で見ていた。




再会と心の距離。