瞳を見開く。
粒子が消えた感覚がした。

突然目の前の彼は膝をついて苦しげな声を漏らした。


「ぼ、僕は・・・何を・・・?」


頭痛がして、と零すアレルヤは、目の前で膝をついているに気付き、直ぐに彼女の両肩に手を置いた。
具合が悪いのかと思ったのか、彼は焦った表情で「!」と彼女の名を呼んだ。


「一体何が・・・、」

「わ、私は大丈夫だから!」


慌てて立ち上がった彼女は、そのまま駆け出した。
思わず彼女の背を見送ったアレルヤの足元で、イエローハロが転がる。


『アレルヤ、アレルヤ』

「あ・・・、」


の、と呟いてアレルヤはイエローハロを持ち上げた。
アレルヤを見上げながら、それは瞳を点滅させた。


「・・・君は、何か知ってるかい?」


愚問か。
アレルヤは直ぐにそう言い、自嘲した。


「君はずっとと一緒に居たんだからね」


4年前から、ずっと。
サポートとしてに与えられたハロ。
黄色い色をしたそれは常に彼女の傍らに居た。
4年前の戦いの後、イエローハロは見ていて痛々しかったとフェルトが言っていた事をアレルヤは思い出した。





『ハロ、太陽炉を、トレミーに戻しておいて』


記録の中の彼女は微笑んで手を伸ばしてきた。
恐らく、ハロの頭を撫でたんだろう。
傷を負っているであろう体。
は瞳を細め、再度口を開いた。


『大丈夫、私は絶対戻るから』

、ロックオン』

『大丈夫だってば』


私は死なないから。
そう言いながらは破損したミカエルのコクピットから宇宙空間へ体を出す。

手を振りながら、は背にあるバックパックの噴射機を展開させる。
そのまま、スパークを起こしている眼前のフラッグへ向かう。


『私は、絶対に死なないで戻ってくる。約束・・・したから』


約束。
彼女はそう言い手を振ったままフラッグに向けて飛んでいく。
遠ざかる彼女に向けて、イエローハロの彼女を呼ぶ声が響き続ける中、記録は途切れた。





それを見たアレルヤは、正直複雑な心境だった。
何故、彼女はフラッグの方へ向かったのか。
何故、彼女はキュリオスの位置情報をトレミーに送った後、一人で行ってしまったのか。

フェルトから聞いたイエローハロの様子は、いつしかのオレンジハロのようだったらしい。
帰還したミカエルは損傷が酷かったらしい。
それに、むき出しのコクピットの中に居たのは、イエローハロのみ。
戦いから幾日か経った後も、ずっとミカエルの傍らに佇み、の名を繰り返して呼んでいたらしい。

アレルヤはふっと笑みを零し、イエローハロを見る。


「君も、が大好きなんだね」

、ダイスキ!ダイスキ!』


耳の様な部分をパタパタと開け閉めさせる。
そんなハロを見ていると、穏やかな気持ちになる。


『アレルヤ、イッショネ、イッショネ!』

「・・・一緒?」

、ダイスキ』


そう言いき切るイエローハロに、アレルヤは瞳を丸くした。
が、直ぐに「そうだね」と言って微笑んだ。


「僕は、やっぱり彼女が大好きなんだ」

『シッテルネ、シッテルネ!』

「でも、マリーも放っておけない」


ホームからずっと一緒だったマリー。
彼女を放っておいて、に付きっ切りだなんて、出来るはずが無かった。

アレルヤは自嘲気味な笑みを浮かべ、イエローハロを掴む手に少し力を込めた。


「・・・僕は、臆病者だね」


が刹那と良い雰囲気になっているのを見て、心が痛む。
先に傷つけたのは、自分なのに。

そう思いながらアレルヤは瞳を伏せた。





プトレマイオス2のメディカルルームでは、レーゲンがデータを纏めていた。
データをスメラギに見せると、彼女は瞳を細めた。
少しの間それに目を通した後、スメラギは寝台から起き上がっているラッセに視線を移した。


「ラッセ、貴方の身体データ、見させてもらったわ」


このままにしておくと、貴方は・・・。
そう言うスメラギにラッセは視線を向けて笑んでみせた。


「今更降りるわけにはいかねぇよ。ま、騙し騙しやってくさ」


そう言うラッセに「でも、」とスメラギは言いよどむ。
そこでメディカルルームに通信が入る。
レーゲンが片手を上げてスメラギを制した後、通信を開いた。


「どうした、フェルト」

『レーゲン・・・スメラギさんに至急伝えたい事があって・・・!』


レーゲンは頷き、すぐにスメラギを見る。
彼女はすぐに頷いて通信モニターを覗き込んだ。


『スメラギさん!観測システムが地球圏で異常な熱源反応を捉えました』

「何ですって?」


地球圏での異常な熱源反応。
明らかに人の手によって起こされた事だろう。


『至急、ブリッジにお願いします』


分かったわ。
そう言いスメラギは通信を切った。
直ぐにラッセを見ると、彼も頷いて立ち上がっていた。


「全員集合、だな」

「ええ。ブリッジに集まるように通信をしておいてちょうだい」

「りょーかい」


レーゲンはそう言い、スメラギを見送った。
彼女に続こうとしたラッセに一声をかける。


「あんま無理すんなよ」


レーゲンの言葉にラッセは少しだけ瞳を丸くした。
が、すぐに口の端を吊り上げると「分かってるよ」と言い出て行った。
ほんとかね、と呟きながらレーゲンはパネルを操作する。
マイスターに通信する準備をする彼の傍らには、のカルテが置いてあった。

人工的に創られた兵器人間、エクステンデッド。
可愛らしい容姿である彼女が、兵器人間だなんて。
最初こそレーゲンは耳を疑った物だ。
しかし、王留美に与えられたデータを見る限りでは、信じざるを得なくなった。

ある一定の処置をとらないと精神や身体を維持できない。
戦闘になると性格が変わる。
ある言葉を聞くと激しく取り乱す。これはブロックワードと呼ばれていたようだ。

には一定の処置は薬物投与となる。
王留美に与えられたデータを基とされ、以前から彼女が服用している物を与えている。
戦闘になると些細な事で怒りを露にしたりと、普段からの違いは多々見て取れる。
レーゲン自身は彼女が実際に戦闘したものを見た事は無いが、過去のデータを見るとはっきりとそれが見て取れた。
ある言葉。これは彼女に最初からなかったのか、それとも偶然にも誰も発していないのか謎のままである。


記憶の改竄・・・か


どのようにするのかも想像し難いが、記憶をも操作されるらしい。
海上で戦い、彼女を刹那が取り戻した際も、恐らく記憶は操作されていたのだろう。
だが、以前は一度しか記憶の操作はされていなかった様だった。
脳波のデータにも乱れを感じた。
記憶が無くなる事と、ブロックワード。もしこれらが合わさってしまえば、大変な事になる。
そう思いながらレーゲンはマイスターに連絡を入れた。

連絡を入れた後、改めてデータを見ると、未だに何だか違和感を感じる。
これだけではない。
他の何かが彼女を蝕んでいる。
そんな気がしてならかなった。


「・・・なんなんだ・・・くそっ・・・!!」


レーゲンはそう言い、痛む頭を抑えた。





プトレマイオス2のブリッジではマイスターが全員集まっていた。
他にもトレミークルーも集まっている。
モニターには、スイールという国の映像が映し出されていたが、そこは見るも無残な残骸と成り果てた。
突如、光が降り注ぎスイールを飲み込んだのだ。


「これは・・・衛星兵器!」

「恐らく、太陽光発電を応用した物だと思われます。入ってくる情報は少ないですけど・・・」

「どこが狙われた?」

「中東、スイールです」


スメラギが驚きの声を上げる。
ラッセの質問にも、フェルトが答えた。
「スイールが?」と刹那が短く声をあげる。
中東といえば、彼の出身地だ。


「これがアロウズ・・・否、リボンズ・アルマークのやり方なのか?」


ぽつりとティエリアが呟く。
アレルヤが「スメラギさん、」と彼女を見やると彼女は頷いた。


「補修が終わり次第、トレミー出港。連邦の衛星兵器破壊ミッションに入ります」


各員持ち場に、
そこまでスメラギが言うと、ティエリアが「待ってくれ!」と声を張った。
一歩前に出たティエリアに、視線が集まる。


「その前にみんなに話しておきたいことがある・・・。連邦を裏から操り、世界を支配しようとする者たちが居るんだ」


何?とラッセとイアンが瞳を細める。
刹那は何も言わずにティエリアを見、瞳を細める。
ロックオンは訝しげに眉を潜めた後、口を開いた。


「どうして、そんなことを知っている?」

「僕は、彼らと会った。彼らの名は、イノベイター・・・!」


ティエリアの言葉に、は瞳を震わせた。

彼は悩んでいた事を全て仲間にさらけ出した。
イノベイターと接触した事、彼らの存在について。
ティエリアの話を聞いて、各々は表情を歪めた。


「ヴェーダによって生み出された生体端末・・・イノベイター」

「そいつらがアロウズを動かし、ヴェーダまでも掌握してるってのか」


刹那が呟いた後に、イアンが声を出す。
彼らの言葉を聞いたアレルヤが、顔を上げて「という事は、」と言う。


「僕たちが武力介入を開始した5年前から・・・?」

「活動してた・・・って事になるな」


アレルヤの言葉にロックオンが肩を竦めながら言う。


「トリニティ・・・3機のガンダムスローネを武力介入に参加させ、
 擬似GNドライブを搭載した30機のジンクスを、国連に提供したのも彼らの仕業・・・」

「つまりヤツラが、イオリアの計画を変えたって事かよ」


そのせいで、ロックオンやクリスは・・・!
スメラギとラッセの言葉を聞き、フェルトが表情を歪める。
少しの間、沈黙がブリッジを包むが、ロックオンが一歩ティエリアに近付き、彼を見下ろす。


「何故そんな大事な事を今まで言わなかった?」

「彼らは、イオリア・シュヘンベルグの計画を続けていると言った」


イノベイターはヴェーダを掌握している。
その彼らが、今は第二段階だと言っていた。
彼らと同じ存在である事も知らされたティエリア自身、心が酷く揺らいでいた。


「それが事実なら、我々の方が、異端である可能性も・・・!」


そんな事!
と、スメラギが声を上げる。
アレルヤも「そうだよ、」と言葉を続ける。


「アロウズをつくり、反政府勢力を虐殺・・・それにまでこんな風に利用して・・・!」


そう言い、アレルヤは瞳を鋭くさせた。
人間兵器として戦場に出された
そもそも、イノベイターが絡んでいると考える事が妥当だった。


「そんなやり方で、本当の平和が得られる訳が無い!」


アレルヤはティエリアにそう強く訴えた。
二人がをちらりと見やる。
彼女は、空色の瞳を細め、拳を強く握った。


「破壊する」


静寂の中、刹那が声を発した。
はっきりとした物言いに、全員が刹那に注目する。


「アロウズを倒し、イノベイターを駆逐する」

「・・・刹那、」


が空色を丸くする。
刹那の真っ直ぐな想いが伝わってくる。
彼の、決意が。


「俺が、俺の意思で・・・!」


真っ直ぐな刹那に心打たれたのか、ラッセが笑みを零して声を出す。


「乗ったぜ刹那!」


ラッセに続くようにアレルヤが頷く。
「俺もだ」と言いロックオンも腕を組んで言う。


「はいです!」

「そうだな」


フェルトも頷き、ミレイナも元気良く片手を上げて言う。
イアンも頷き、スメラギも笑みを浮かべる。
ソレスタルビーイングはアロウズを倒し、イノベイターをも倒すと決意を新たにした。
ティエリアも慌てて一歩前へ出、声をあげる。


「みんな!僕も彼らと・・・!」


同じ、
そうティエリアが言いかけた時、スメラギが彼の肩を叩いた。


「大体の事情は分かったわ」


そう言うスメラギは、察知しているようだった。


「でも、今しなければならないのは、敵の衛星兵器を破壊することよ」

「スメラギ・李・ノリエガ・・・」


不安げに真紅の瞳を揺らすティエリアに、スメラギは優しい笑みを向けた。


「貴方は、私たちの仲間よ」


スメラギの言葉にティエリアも嬉しそうに笑みを零した。





オーライザー、GNアーチャーもトレミーに搬入された。
カマエルの新しい機能も試作段階だが出来たようだった。


「俺やティエリアの機体にも、新システムが追加されたらしいな」


プトイレマイオス2に無事搬入されたオーライザーを見ながら、ロックオンが隣に立つアニューに言う。
彼女は頷き、真紅の瞳をロックオンへ向けた。


「リンダさんの自信作です。戦果を期待します」

「オーライザーも出撃出来んのかい?」


ロックオンの言葉にアニューは「いいえ、」と言い首を振った。


「プトレマイオスに搬送してからも、ダブルオーのトランザムに合わせて調整作業を行うことになります」


そうか、と言いロックオンは彼女を見やる。
アニューは再びオーライザーに視線を移していた。


「これでお別れか。あんたとは、もう少し話をしてみたかったが」


それは本心。
短い間だったが、彼女とは話していて不思議と気を抜けた。
それは恐らく、自分と兄を比べないから。

そう思っていたロックオンだが、アニューは意外な返事をした。


「それが、お別れしないんです」


え?
と、ロックオンが瞳を丸くする。
それにアニューは悪戯っぽく笑った。


「イアンさんの推薦を受け、プトレマイオスに乗船する事になりましたから」

「へぇ、そいつは・・・」


ロックオンはそう言い瞳をうっすらと細めた。





は刹那と一緒に居た。
ダブルオーとオーライザー、そしてカマエル。
各データをチェックする刹那の背をは見ていた。
そこには、沙慈も一緒に居て、カマエルとダブルオーの調整を手伝っていた。


「・・・とちゃんと話すのって、久しぶりだよね」

「・・・沙慈、前に話した」


前に。
がプトレマイオス2から脱走しようとした時、彼女を見つけて引き止めたのは沙慈だった。

その事を言っているのだと理解した沙慈は、苦笑した。


「あの時はびっくりしたよ」


そう言う沙慈に、刹那が顔を上げた。
彼は沙慈に「お前は、」と口を開いた。
そこで、スメラギの放送がかかった。


『全クルーに通達します。トレミーは、0032をもって出港します。
 作業員は補給終了後、当基地を破棄。各データの抹消後、輸送艇で、Y45ルートより離脱して下さい。
 トレミーは0037をもって、連邦の衛星兵器破壊ミッションを開始します』


それを聞いた後、沙慈は刹那の言いたい事を理解したのか、データ端末を手に持ったまま彼を真っ直ぐ見返した。


「僕も残るよ」


そう言う沙慈に、刹那は瞳を丸くした。


「トレミーに残る?」

「僕にも何かやれる事があると思うんだ。戦わなくてもやれる事が・・・!」


そう沙慈が言い、瞳を鋭くさせる。
彼も新たな決意をしたのか、それとも探しているのか。

彼らのやり取りを見ながら、はイエローハロを抱く手に力を込めた。


、ズツウ?ズツウ?』

「・・・さっきちょっと痛みを感じただけ。もう、平気」


先ほど一瞬感じた痛み。
脳量子波を感じた。
そう思っていると、突如艦内が大きく揺れた。
衝撃と爆音。これは、


「攻撃か・・・!?」


刹那がそう言い、瞳を細めた。
データ端末を閉じ、刹那はダブルオーに向かった。


「沙慈!を連れてブリッジへ行ってくれ!」

「分かった!」


さぁ、
と、沙慈がの腕を引く。





「これは!3方向より、当基地にミサイル攻撃です!」

「一歩遅かった・・・!」


ブリッジではフェルトの報告にスメラギが苦い表情をした。
「敵の戦力は?」とラッセが聞くとフェルトがパネルを操作する。


「解析不能です!」


フェルトがそう言った直後、またミサイル攻撃が基地と艦を襲った。
基地に居る別スタッフたちは輸送艇で脱出をしているようだった。

スメラギは瞳を細め、苦渋の表情を浮かべた。
そこにアニュー、ミレイナ、沙慈、マリーが入ってくる。
アニューは「遅くなりました!」と言い操舵席に飛び移った。
ミレイナも「すみませんです!」と言い所定の位置につく。


「お二人は、そこの席を使って下さい」


フェルトに言われ、沙慈とマリーも席に着く。
は?」とラッセに言われた沙慈は眉を下げた。


「それが・・・、ブリッジには行けないって」

「・・・メディカルルームか、どちらにしろレーゲンが保護してくれてるだろうがな」


ラッセはそう言い苦笑した。


「ガンダム各機、発進準備。アニュー、トレミーの操舵をお願い」

「分かりました!」

「頼むぜ、これで砲撃に専念できる」


スメラギにアニューがしっかりと返事を返す。
ぎゅ、と操舵幹を握る彼女に、ラッセが言う。


「補給を中止して、トレミー緊急発進!敵をこちらに引きつけるのよ」

「りょ、了解・・・!」


突然の実戦に戸惑いを浮かべながらもアニューが操作をする。
フェルトは慣れた手つきでパネルを操作する。


「補給作業中止、トレミーの固定用アームを解除します」


固定用のアームが解除され、プトレマイオス2から離れる。
残りのアームを外すため、フェルトは作業を続ける。
ミレイナは「ママ、」と輸送艇で脱出しているであろうリンダを案じた。
その間にも、ガンダム各機が発進をする。

オーライザーは未だ調整に時間がかかるようで、発進はしなかった。
基地の裏手から輸送艇が3隻発進される。


「アレルヤ、安全圏まで輸送艇の護衛を」

『了解。アリオス、防衛行動に入る』


飛行形態となったアリオスが輸送艇の防衛に移る。


「GNフィールド、展開です!」

「ゲートオープン。各接続アーム、切り離します」

「プトレマイオス、発進します!」


女性三人の声が響き、プトレマイオス2が発進をする。
頭から基地に入っていたので、後進して無事宇宙空間へ出る。
プトレマイオス2が出港した直後、基地が爆発を起こした。
爆風をも利用し、回頭したプトレマイオス2は、そのまま進む。

敵MS部隊が唐突に現れた。
それにフェルトが声を出す。


「敵部隊が出現しました!」

「総数12です!」


「熱源を遮断して!?」とアニューが焦りの声を上げる。
それにスメラギは刹那に指示を出した。


「刹那、迎撃を!」


了解、という刹那の声が響く。
直後、GNソードライフルモードから放たれたビームがGN−XVを撃破した。
次に迫るアヘッドにGNソードを振るう。
切り結ぶダブルオーの背後から、別の機体が回り込んだ。
背後に回りこんだGN−XVが何かを投げる。
それは発煙し、ダブルオーを包み込む。

直後、電撃がダブルオーを襲った。


うわあああああ!!


刹那が悲鳴を上げる。
ダブルオーの脇を、敵MSが通り抜けていく。


「敵部隊、接近!」

「ティエリア!」


次にスメラギはティエリアに指示を出す。
プトレマイオス2の前に居るセラヴィーは、攻撃の準備をする。


『ツインバスターキャノン、高濃度圧縮粒子、解放!』


敵部隊にビーム攻撃を放つ。
が、中間にあった小惑星のダミーから新型のMSが現れた。
以前強襲を仕掛けてきたアロウズのMS、ガラッゾだった。


『何!?』


ガラッゾにツインバスターキャノンのビームが曲げられた。
敵機は一気に間合いを詰めて来、セラヴィーに組み付いた。


『馬鹿な!!』


焦りの声を上げるティエリア。
アニューは瞳を見開き「新型が!?」と声を上げる。


「こんな奇襲を!?・・・マネキン!」

「敵部隊が!」


フェルトが焦りの声を上げる。
ラッセが「やらせるか!」と言いGNミサイルとGNビームを発射する。

プトレマイオス2の下方からは、ケルディムがビーム攻撃をしていた。
が、中々狙いに当たらず、相手は素早い動きで尽く避けていく。
素早い!と思わずロックオンが零した時、オレンジハロが声を上げた。


『ゾウエンブタイセッキン!ゾウエンブタイセッキン!』

『何!?ぐっ!』


反対側からケルディムに攻撃がいく。
ケルディムに攻撃が当たり、思わずロックオンが声を上げる。


「後方より、敵増援部隊6です!」

「波状攻撃!?」

「この程度の戦術!」


スメラギが悔しげに拳を握った。
そんなプトレマイオス2に、狙いを定める機影があった。
両足を小惑星に突き刺し、機体を固定させた其れ。
新たな新型、砲撃を主としたガラッゾは大型のライフルを構えた。

照準は、プトレマイオス2。


『スメラギさん!上から来る!!』

!? !?


一体どこから通信を、
突如ブリッジに響いたの声に反応する。

直後、ガデッサの放ったGNメガランチャーがGNフィールドを突き抜けて第三格納庫に直撃した。


「GNフィールドが!」

「直撃、第三格納庫です!」


各々悲鳴をあげつつも報告をする。
第三格納庫。
そこはイアンがオーライザーの調整を行っている所だった。
フェルトの報告にミレイナが「パパ!」と悲痛な声を上げる。


「第三格納庫への通信不能、映像も出ません!」

「・・・クロスロード君、至急、第三格納庫の様子を見に行ってもらえる?」


スメラギの唐突な物言いに、沙慈は瞳を見開いた。
「え、」と声を漏らす彼に、スメラギは頼んだ。


「イアンの無事を確かめて!」


スメラギの言葉に沙慈は瞳を揺らし、立ち上がった。


「わ、分かりました!!」


僕にも、出来る事。
そう思い、沙慈はブリッジから出た。




アニュー加入です。
個人的好きキャラです。