「何故・・・俺は戦いを・・・」


マリナと子どもたちの歌が響く中、刹那はそう呟いていた。





朝日も昇り、辺りが明るくなった頃のカタロン中東支部。
マリナは洗濯物の入った籠を抱えながら歩いていた。


「接近してくるMSがいる?アロウズか?」

「いえ、ガンダムです!」


聞こえた単語に、思わずマリナは足を止める。
そのまま倉庫へ向かったマリナは、ダブルオーライザーを見上げた。


「あのガンダムは・・・!」


接点のあるマイスターの乗るガンダム。
カタロン兵士たちの間を通り、マリナはワイヤーを使って降りてきた刹那の下へ駆け寄った。


「刹那!一体何が!?」


刹那は名を呼ばれそちらへ目を向ける。
傷のせいか、意識が朦朧としてきた。

間近まで来た彼女を目に留めると、苦しげに息を漏らしながら彼女の名を呼んだ。


「マリナ・・・イス、マイール・・・」


そう言うと刹那は膝を折り、その場に崩れ落ちた。
咄嗟に駆け寄ったマリナが支え、「刹那!」と彼の名を呼ぶ。


「どなたか、衛生兵を呼んで!
 ・・・刹那しっかりして!刹那!刹那!」


マリナの自分を呼ぶ声を聞きながら、刹那の意識は闇へと落ちて行った。










船体上部に光学迷彩を展開したまま、プトレマイオス2は走行していた。
谷間を通りつつも、センサーをチェックする。


「Eセンサー、光学カメラ、ともに反応無し。この空域に連邦軍は展開していないみたいです」


フェルトの声が響く中、ロックオンが「合流ポイントへ急ごう」と言う。


「カタロンの補給部隊は既に到着してるらしい」

「情報をくれたカタロンに感謝しなきゃ、な?」


ラッセがそう言いつつ、ロックオンを見やる。
それに彼は「う、」と短く声を漏らしたが、笑みを零した。


「言っとくよ」

「ライルにも」


悪戯っぽく笑ったアニューが言う。
それにまたロックオンは言葉に詰まったが、直ぐに困ったような柔らかい笑みを零した。



格納庫では、ミレイナがセラヴィーの足元で端末を操作していた。
右腕が無いセラヴィーの状態をチェックした後ミレイナは「うん、」と声を漏らした。


「とにかく、直せる所だけでも直すです!」

『リョウカイ!リョウカイ!』


色とりどりのハロたちがそう言い行動に移る。
そんなミレイナの傍に、沙慈とマリーが来た。


「僕たちも手伝うよ」

「協力、感謝です!」


明るい笑みを返したミレイナに、沙慈とマリーも笑みを返した。





ブリーフィングルームにはスメラギ、イアン、ティエリア、アレルヤが居た。
先の戦いの報告をしたティエリアに、イアンは「そうか」と言う。


「セラフィムを使用したか」

「そうしなければ、イノベイターの機体にやられていた」


そう言うティエリアに、スメラギは顎に手を当てて口を開く。


「彼らは、セラフィムの特性に気付いたかしら?」


スメラギの言葉にティエリアは「何とも言えません」とだけ返した。
それに関しては予想が出来ない。
ヴェーダを掌握している彼らは何かしら感づいた可能性は低くは無いが。


「とにかく、カタロンの補給を受け、連邦の包囲網を抜け出さんと・・・」

「トレミーの火器管制が使えない今、アロウズが来たらひとたまりも無い・・・」


イアンの言葉にアレルヤがそう言う。
それに頷き、イアンは言葉を続ける。


「ダブルオーライザーなら、この状況を打開できるんだが・・・」

「刹那は必ず戻って来る」


ティエリアの凛とした声が響いた。
それに、全員の視線が彼に集中する。

ティエリアは真紅の瞳を鋭くさせ、再度口を開いた。


「僕は、信じている・・・!」


ティエリアの言葉に、沈黙が落ちる。
そこにドアのスライド音が響き、レーゲンが入ってきた。


「良いね。信頼し合える関係ってのは」

「レーゲン、」


スメラギが彼を呼ぶ。
レーゲンはティエリアの肩を軽く叩き、「同じだな」と言った。


「同じ?」

「そ。も言ってたぜ」


刹那は帰って来るって。
そう言うレーゲンの言葉にアレルヤは瞳を僅かに細めた。

未だに格納庫のカマエルの前で座り込んだままの
そんな彼女にレーゲンは問うたのだ。




『刹那が居れば、変に不安に思う事も無いだろうにいな』

『・・・帰って来る』

『ん?』

『・・・刹那は、帰って来る』





約束も、したから。
はそう言っていた。





『俺は、俺の想いは変わらない』


刹那はにそう言った。


『お前の好きにすれば良い』

『・・・私の、好きに・・・』

『俺はそんなお前の傍に居る。お前を守るから・・・』





刹那、とが彼の名を呼ぶ。
彼は柔らかい笑みを浮かべ、彼女の頬に手を移した。
優しい彼の手つきに、くすぐったそうには身を捩る。


『いつだったか、俺を好きだと言ってくれたな』


唐突に言う刹那に、が短く声を上げる。
確かに言った記憶はあるが、それは4年前の出来事だ。
それを刹那が覚えている事を意外に思いながら、は頷く。
頷いたに安心したように微笑み、刹那は彼女の額に自分の額をつけた。


『俺も、好きだ』





刹那の想いをは信じている。
そして、刹那も彼女を信じているんだろう。

それが見て取れた。

沈黙が落ちる中、艦内放送が響いた。


『まもなく、合流ポイントに到着します』


フェルトの艦内放送に全員が動き出した。










闇が辺りを包んでいた。
気付けば刹那は不気味に静まり返った街中に居た。


「・・・ここは?」


そう呟いたところで、ある一軒の家を見つける。


「この家は・・・!」


そう刹那が驚きの声をあげた瞬間、銃を手に持った少年が入ってきた。


「この身を神にささげ、この聖戦に参加する!」


そう言い刹那の横を素通りした少年は、間違い無く過去の自分だった。


「神に認められ、神に許された・・・戦士となる!」


覚えのある光景。
刹那の心音が早くなっていく、嫌な汗がどっと吹き出る。


「ソラン!」

「今までどこにいたんだ!?」


懐かしき両親の声を耳にした刹那は、思わず駆け出した。
家の中に入ると、両親に銃を向ける子どもの自分がそこに居た。


「何をする!?」

「ソラン!」


怯えた瞳をした母親。
彼女を庇うように前に出る父親。

刹那は思わず「やめろ!」と言い子どもの自分から銃を奪い取った。


「何をするんだ!僕は、神の教えを守る為に!」

「この世界に神は居ない!」


そう言い刹那は悲痛な表情をした。

そう、この頃は信じきっていた。
あの男の言葉を。


「・・・居ないんだ!お前がしている事は、暴力を生み出すだけの卑劣な儀式だ!」


そう言い刹那は幼い自分の両肩を掴み、母親の方へその小さな体を押しやった。


「こいつを家から出すな!」


奪った銃を手に持ちながら刹那は家を飛び出した。
駆け出した先の道には、人影があった。

その人影がはっきりと見て取れる距離まで来た刹那は驚きから瞳を見開いた。


「あ・・・、ああ・・・!」


そこに居た人物は、深緑のパイロットスーツを身に纏ったかつての仲間。


「・・・ロックオン・・・!!」


右目に眼帯をつけた彼は、真っ直ぐに刹那を見詰めた。


「刹那。過去によって変えられるのは、今の自分の気持ちだけだ」


自分の、気持ち、
と刹那が呟く。

それにロックオンは頷き、言葉を続けた。


「ほかは何も変わらねぇ。他人の気持ちや・・・ましてや命は・・・」


自嘲的な笑みを浮かべ、言うロックオン。
直後、背後の家から銃声が響いた。

勢い良く振り返った刹那は、手の内にあった銃が消えている事に気付く。

再度響く銃声。

家の中から、銃を手に持った子どもの刹那が出てきた。
唖然とする刹那に、背後に居るロックオンは「刹那、」と彼を呼ぶ。


「お前は変われ。変わらなかった、俺の代わりに・・・」


そう言い、ロックオンは消えた。
辺りを見渡す刹那の耳に、歌が響いた。


「歌?この歌は・・・、」





そこで、刹那は目が覚めた。





刹那は、子ども部屋で寝かされていた。
子どもたちが歌っていて、マリナは彼の傍らに居た。


「気がついた?」


そう言い濡れタオルで刹那の汗を拭いてくれる。
彼女の姿を目に留めた刹那は、彼女の名を呼ぶ。


「マリナ・・・ここは?」

「お兄ちゃんが起きた」

「怪我治ったの?」


子どもたちも刹那の周りに集まってきた。
それにマリナは小さい笑みを返し、少し静かにするように仕種をした。


「・・・マリナ、さっき聞こえていた歌は?」

「この子たちの願いを歌にしたの」


ね、と言うマリナに子どもたちが微笑む。
それに刹那は「そうか、」と言い先ほどの事を思い出す。


「俺は、トランザムの中であの歌を・・・」


そう言いつつ体を起こそうとする刹那。
だが、サーシェスに撃たれた傷が痛み右肩を押さえる。
体を起こそうとした刹那を支え、マリナは「まだ駄目よ!」と言う。


「弾は取り除いたけど、ここには細胞活性装置なんて無いから」

「う・・・俺は・・・!」

「傷を癒す間だけで良いから・・・!」


マリナはそう言い再度刹那の体を横たわらせた。


「・・・4年前、貴方がくれた手紙に、こう書いてあったわ。
 人と人が分かり合える道を、その答えを探してるって」


マリナの言葉を、刹那は黙って聞いていた。


「分かり合う為には、互いを知る事から始めないと。その時間ぐらい、あっても良いでしょ?」


微笑むマリナに、刹那は先ほどの夢の事も含め、自身の過去を彼女に明かす事にした。
人と人が分かり合う為、互いを知る事から始める。
彼女の言う事は尤もな事だった。

刹那の過去の話を聞いたマリナは、まるで自分の事のように悲しげに瞳を細め、胸を押さえた。


「そんな・・・、クルジスの戦いの時、貴方にそんな過去があったなんて・・・」

「10年以上も前の事だ・・・」

「それが貴方の・・・戦争を憎む理由?」


マリナの問いに、刹那は答えなかった。
少し間が空いた後、彼女は再度口を開いた。


「・・・私はね、どこにでもある普通の家庭で育ったわ。
 音楽が好きで、出来ればその道に進みたかったけど・・・私の血筋のせいでアザディスタンの皇女に選ばれてしまって・・・」


静かにマリナの話を聞いていた刹那が「確かに」と零した。


「あんたは一国の皇女より、音楽を奏でる方が、似合って見える・・・」

「・・・無理をしてたのかしら。でも、あなたも同じに見えるわ」


マリナはそう言い、悲しげに瞳を細めた。


「無理をして、戦っている」


それを、刹那は否定出来なかった。

無理をして戦っている。
それを聞いて刹那はある人物を思い出した。

眩い、金色。空色の瞳。


「・・・、」


思わず彼女の名を呟いた。
それが聞こえていたマリナは小首を傾げる。


「・・・誰か、大切な人を想っているのね」

「・・・何故、そう思う?」


簡単よ。
マリナはそう言い微笑んだ。


「今の刹那、とても優しい顔してるもの」


マリナがそう言ってすぐ、池田がやってきて壁をノックした。
「ちょっといいかな」と言い彼は刹那を見た。


「君の船が、ヨーロッパ支部から補給を受けたという情報が入ってね」

「トレミーが!?」


刹那はそれを聞いて直ぐに体を起こした。










時刻が昼過ぎになった頃、プトレマイオス2は谷間を通っていた。
スメラギはイアンと通信をし、現状況についてを聞いていた。


『カタロンが調達してくれた補給物資のおかげで、外壁部の補修はまもなく終わる』

「敵が来る前に、どうにかなりそうだな」


イアンの通信に、ラッセがそう言う。


『だが、潜水モードはまだ無理だ。火器管制システムにも不具合がある』

「引き続き、作業を」


そう言うスメラギにイアンは「合点だ」と言い通信を切った。

格納庫では、キャットウォークでミレイナと沙慈が疲れ切って眠っていた。
セラヴィーの右腕は、完全に修復されている。

ティエリアはブランケットを持ち、彼女に近付く。
膝を折って、彼女にブランケットをかけてやる。


「・・・ありがとう、君が居てくれてよかった」


彼女を起こさないように、小声で言う。
次は沙慈にブランケットをかけようと移動しようとしたティエリアの耳に、ミレイナの寝言が聞こえる。
もにゃもにゃと何を言っているのかはさっぱり分からなかったが、ティエリアは思わず笑みを零した。



未だにはカマエルの前に居た。
しゃがみ込んだまま、手には携帯端末を持っている。

ぐるぐると、頭の中に色々な事が回る。

どうして戦っていたんだっけ。
ステラたちを守るため。

今はどうして戦ってないんだっけ。

どうして、


「は、う・・・!」


酷い頭痛に見舞われた。
そういえば最近は戦場に出ていなかったせいかあまり薬を飲んでいなかった。
そのせいだろうか、戦場に出なければ精神は安定できているからと、

そこまで思い、はポケットから薬を取り出してまじまじとそれを見詰めた。


「・・・これ、何の薬なんだろ、」


レーゲンからも手渡された薬。
それは4年前も王留美が渡していたものと変わらないと彼は言っていた。

何の、薬。

でも、飲まないと、痛みが治まらないから、

そう思い、荒い呼吸をくりかえしつつも、薬を飲み込む。
そのまま項垂れた彼女は、両手を床について瞳を揺らした。


「・・・戦わない、のは、」


そうだ、刹那に連れてこられて、ソレスタルビーイングに戻って、

そう、迷惑を、たくさんかけてしまったから、

アレルヤは元々マリーを想っていた。
それなのに、脇から出てきた自分が邪魔をしてしまった。

迷惑ばかり。

そうだ、戦う事が私の存在意義だった。

戦う事、だけが。


がそう思っていると、警報音が響いた。


『敵MS隊、本艦に向けて接近中です!』

!!

『粒子放出量からみて、敵部隊はアロウズと推定!』


各マイスターたちも駆ける。


「アニューが言ってた通り、敵はこっちの位置を完全に捉えてやがる!」


ロックオンはそう言いながらも着替えを済ませ、オレンジハロを小脇に抱えた。
アレルヤとティエリアも直ぐに出撃準備に取り掛かる。

ブリッジではスメラギがフェルトに敵の情報を聞いていた。


「フェルト、敵の数は?」

「敵総数、36機!」

「36機だと!?」


ラッセが驚きの声をあげる。
パネルを操作しながらフェルトは「新型のMAもいるようです・・・」と続ける。


「総力戦できましたね・・・!」

「みたいね・・・ガンダム、順次発進!トレミーは山脈を盾にして退避を!」


アニューの言葉にそう言い、スメラギは指示を出した。


先に出撃したケルディムがGNスナイパーライフルを構える。
海岸線の崖上からトランザム状態となり、アロウズ部隊を狙撃する。


「先制攻撃で数を減らす!」


プトレマイオス2は後退をしている。
今は兎に角ケルディムで敵の出鼻を挫くしかない。


「ハロ、粒子をケチるな!」

『リョウカイ!リョウカイ!』

「そうさ・・・狙い撃つぜ!


GN−XVを2機撃墜した後、アヘッドも落とす。
敵部隊は散開しつつ、防御体制をとった。
此方のトランザムの限界時間がある事も知っているようだった。

それでも、ロックオンはまた1機撃墜する。

新型MA、エンプラスとの周囲にはガデッサ、ガラッゾが2機ついていた。
真っ白く、大きなアームのついたエンプラス。
恐らくあの4機に乗っているのはイノベイターだろう。

ケルディムがGNスナイパーライフルを撃ち、数機撃破をするが、トランザム限界時間がきた。


『ゲンカイジカントウタツ!ゲンカイジカントウタツ!』


トランザムが終了し、ケルディムは素早く崖の影に身を隠した。


「ノルマは果たした・・・チャージするまで頼んだぜ、アレルヤ、ティエリア」


ロックオンがそう言いチャージ状況を確認する。
セラヴィーとアリオスがケルディムの上を通っていく。


「アレルヤ、敵をトレミーに近づけさせるな!」

「了解!」


突撃してくるアロウズのMS部隊。
セラヴィーはGNフィールドを展開しつつ、GNキャノンを放つ。
GN−XVを落としつつ、進むセラヴィーに迫ったのは、薄色のガラッゾだった。


『あんたらの相手は、あたしらだって!』


甲高い女の声。
ヒリング・ケアがセラヴィーに攻撃をしかける。
後ろから砲撃型のガデッサも迫る。

ガラッゾに攻撃をしかけようとしたセラヴィーだが、ガデッサが高速に接近し、セラヴィーに体当たりをした。
攻撃を逃れたガラッゾはそのままアリオスに向かう。
深い色合いのガラッゾも迫り、ビームサーベルをアリオスに振るう。
それを避けつつ、ビーム攻撃で反撃をする。

集中攻撃され、セラヴィーはGNフィールドを展開した。


「反撃の糸口を・・・!」


ティエリアがそう言い敵の隙を伺おうとした瞬間、警告音が鳴り響いた。

エンプラスが迫ってきたのだ。

右の有線クローが開き、有線兵器が射出された。
それはGNフィールドを付きぬけ、有線兵器からワイヤーが更に射出された。


「何!?」


それはセラヴィーに絡みつき、電流を流した。
放電攻撃は、セラヴィーのコクピットにまで及んだ。


うああああああああ!!


ティエリアが捕まり、攻撃されているのに気付いたアレルヤが直ぐに援護に向かおうとする。
が、深色のガラッゾに背後から攻撃され、出来た隙をセラヴィーと同じく電流攻撃をされてしまう。


ぐあああああ!!


エンプラスとガンダム2機の脇を、アロウズのMS部隊が突破する。
そのまま真っ直ぐと、敵部隊は後退するプトレマイオス2に迫る。


「敵モビルスーツ隊が・・・!ぐあああっ!


痛みに苦しみの声をあげつつ、アレルヤは金色の彼女を想った。
あの艦には、トレミーには、が乗っているのに!!


「ハロ、敵が来る!」


岩陰に身を隠していたケルディムの中で、ロックオンが焦りの声をあげる。
が、オレンジハロはパタパタと耳のような部分を開閉させ、チャージ中を知らせるだけだった。


『GNリュウシ、チャージチュウ!GNリュウシ、チャージチュウ!』

「早くしろよ!・・・ぐっ!


ケルディムに攻撃しながらアロウズのMS部隊は通過していった。

防衛ラインと突破された事により、ブリッジに緊迫した雰囲気が漂う。


「敵部隊、接近!射程距離まで、0034です!」

「武装が使えねぇ!」

「残っているのはカマエルとGNアーチャーだけです!」


ラッセとミレイナの焦りの声が響く。
ブリッジのサポート椅子に座っていたマリーが思わず立ち上がり、スメラギの真横まで移動する。


「私に行かせてください!」

 でも・・・!」


アレルヤは彼女を戦場から放す為に連れて来た。
その彼女にGNアーチャーに乗り、戦うように言うなんて。

スメラギが何か言うより先に、マリーは駆け出そうとした。
が、モニターに映った敵部隊を見て脚を止めた。
沙慈も瞳を見開き、立ち上がる。


「あのMSは!」

「あっ・・・私の・・・機体?」


それは間違いなく、脳量子波でのコントロールが可能な、元ソーマ・ピーリスの機体、アヘッドスマルトロンだった。
「どうして、」と呟くマリーの横で、沙慈が叫んだ。


「ルイス!!」

「え・・・?」


沙慈の声に思わず彼を見る。


「ルイス・・・!やめてくれ、ルイス!」


沙慈がそう叫んだ瞬間、眼前のモニターがパッと切り替わった。
映ったそれに、全員が驚きの表情を浮かべる。


・・・!?


モニターに映ったのは、コクピット内に居るだった。




ドタバタ急展開。