「どうして私に罰は無いんですか?」
アレルヤを見送ったのは私です。
そう言うにスメラギは「貴方はミッションを優先したでしょ?」と言う。
あの後アレルヤを見送ったは人革連の新型MSのデータを見る為に敵艦隊へ接近した。
周辺を旋回し、警告をしつつ迫ってきた敵を撃墜した。
そこから新型のこれからの使用用途等の情報を確認しつつ、牽制をしかけた。
まぁ、救助に向かった人革連の人たちは見逃したが。
は確かにミッションをアレルヤの代わりに優先した。
しかし、なんだか腑に落ちない。
思わず横に居たティエリアに視線を向けると、彼は小さく息を吐いた。
「・ルーシェ。次からはちゃんとあれを見張っておけ」
「見張るとか・・・アレルヤはペットじゃないんだから」
そう言うと、ティエリアは真っ赤な瞳を細めて顔を背けてしまった。
ツンツンしてるなぁ。
そう思いながらは小さく息を吐いた。
無重力ブロックはキュリオスの働きで中に居た民間人は全員無事だった。
デュナメスの高高度砲撃能力のお陰で地上から重力ブロックの連なる部分を撃ち壊した。
だからこそ推力を保つことができたのだが、その能力は未だ世間の目に晒す予定はなかった。
それらも問題視されている。
そして、命令違反のアレルヤは独房入りを命じられていた。
気になっていたので、は彼の所へ行ってみることにした。
食事を持っていくのも、出来る限り引き受けよう。
ティエリアにも見張れといわれたわけだし。
そう思い、はアレルヤの下へ移動をした。
とりあえず、独房のドアの前で「アレルヤ」と声をかけた。
返事をしたので室内に入ると、彼は壁に寄りかかっていた。
「アレルヤ、なんかごめんね」
本来なら私もここに入るはずだったのに。
そうが言うとアレルヤは優しく微笑んで首を振った。
「ううん、いいんだ。ミッションを君に押し付けてしまったしね・・・」
「結局私、あんな事言ったのにアレルヤのところにいけなくて・・・」
思わず顔を俯かせる。
半重力の中、アレルヤに近付いて彼を見下ろす形になる。
銀の瞳で見上げる彼の表情は優しげで、それがなんだかの申し訳なさを増させた。
「・・・ねえ、あの時の声はなんだったの?」
「声?」
「頭に響かなかった?」
声が、と言うとアレルヤは銀の瞳を見開いた。
「君も・・・?」と言うアレルヤには頷いてみせる。
「なんか頭痛くなって、よく分かんないままにアレルヤがなんか変わって・・・」
「・・・、君も・・・」
アレルヤはそこまで言って顔を俯かせた。
そして、ゆっくりと顔を上げた。
「・・・あっ!」
「やっぱり同類か、女」
金の瞳を此方に向けている。
声こそは聞こえてこないけれど、彼を通してアレルヤが焦っている感覚が伝わってくる。
なんでそんなに焦っているんだろう。
はそう思いながら彼を見上げた。
「・・・あなたの名前は?」
「言ってたじゃねぇか、名前」
もう忘れたのか?
そう言う彼に思わず瞳を丸くする。
ステーションで思わず反復した名前は、確か・・・、
「ハレルヤ?」
「大正解だ」
彼、ハレルヤは口の端を釣り上げて腕を伸ばしてきた。
そのままの腕を掴み、彼は楽しそうに金の瞳を細めた。
予想以上に強い力で腕をつかまれ、は思わず痛みで表情を歪める。
ハレルヤは彼女の腕を強くにぎりながら口を開いた。
「お前がアレルヤを守れるのか?」
こんな細っちいくせに。
そう馬鹿にしたように言うハレルヤには眉を吊り上げた。
「・・・アレルヤを守る、私はそう約束した!」
「だから、お前なんかがあいつを受け止めきれんのかっつってんだよ」
「アレルヤは今までずっと傷付いてきた。私が全てを支えられなくてもこれから守る事も出来る!」
真っ直ぐにハレルヤを見て反論をする。
「痛みの捌け口になってもいい、アレルヤには安らいで欲しい・・・そう思う事はいけない事なの?」
そう言うと、ハレルヤは視線を少しだけ彷徨わせた。
また心の中で二人で話しているのかと思いじっと見詰めていると、頭をがしっと捕まれた。
「わっ!?」
「いい度胸じゃねぇか、女」
「お、女じゃないから!名前知ってるくせに!」
そう言うとハレルヤは知らねぇな、と言っての髪をぐしゃぐしゃにした。
絶対嘘だ!
はそう思いながらハレルヤを見上げると、意地の悪い笑みを浮かべていた。
明らかに楽しんでいる表情に、は頬を少し膨らませた。
「ハレルヤ、いじわる」
「ハッ、ガキかっつーの」
「・・・なんか、楽しそうだね」
「楽しいからな」
そう言って笑うハレルヤに嘘は無さそうだ。
いじめることが楽しさなのなら彼はとんだサディストだ。
けれど、
アレルヤが苦しんだように、ハレルヤも苦しんできたのだろうか。
もしそうだったのなら、少しでも彼らの心を癒せるのなら。
がそう思っていると、今度は前髪を全部上に上げられた。
一気に視界がクリアになり、呆れ顔のハレルヤがよく見えた。
「ったく、アレルヤもこんな女のどこがいいんだか。俺にはわからねぇな」
「ハレルヤにとって、私がアレルヤを支えようとすることは駄目なことなの?」
「あ?」とハレルヤ短く声をあげた。
心なしかあまり警戒はしていないように感じる。
それにどこか嬉しさを感じながら、思わず笑う。
「私は、アレルヤとハレルヤを守りたい、支えたい、一緒に居たい」
「・・・・・・」
「私、守られてばっかりじゃ、嫌なの」
だからお願い、傍に居させて。
そう言ってハレルヤを見上げると、彼は真剣な表情をしていた。
「・・・お仲間だから同情ってか?」
「私はそんなつもりじゃ・・・!」
「あ?・・・あー、お前はそうだろうな」
ハレルヤはそう言うともう片方の手も伸ばしてきた。
がっしりと掴まれてしまい、は身動きが取れなくなる。
なんだろうと思い、近付いたハレルヤを見上げる。
「・・・ハレルヤ?」
「いいぜ、お前気に入った」
「え?」
至近距離にあるハレルヤの金の瞳が楽しそうに揺れる。
「俺もしょうがねぇから守ってやるか」
「え?」
「アレルヤがお前を守るって今もうるせぇんだ。俺もたまにはアイツに便乗するのも悪くねぇってことだ」
「・・・ありがとう、ハレルヤ」
かなり言い訳をしているけれど、つまりは守ってくれるとハレルヤは言ってくれている。
私はもちろんハレルヤもアレルヤも守る。
心優しい双方を、守りたい。
そう思い、は微笑んだ。
最初こそハレルヤは警戒の色を強めていたけれど、これはきっとアレルヤを守るためだ。
やっぱりハレルヤは優しい。
そう思いながらがニコニコと笑っていたら彼は「なんだぁ?」と言って意地悪い笑みを浮かべた。
肩にあった手がするりと頬へ移動する。
「物欲しそうな顔しやがって、キスでもしてやろうか?」
「!!」
今日の教訓、ハレルヤはやっぱりサディスト。
思わず両手で近付いてきた彼の顔を押した。
ハレルヤちゃんと登場です。
ハプティズム夢が中心になるので以降もびしびし出しますよ←