をルットーレから救出した。
レーゲンは無事。ジュビアと分かり合う事も出来た。
その知らせを受け、プトレマイオス2のブリッジには、安堵の息が零れていた。


「アロウズの部隊も、残りは全機撤退しました!」

「・・・そう、刹那たちは?」

「・・・ダブルオーライザーは先に帰還しました。セラヴィー、ケルディムも帰還ルートの入っています」

「アリオスとGNアーチャーも帰還ルートに入ったです!」


ミレイナの声にフェルトは「良かった」と言い瞳から雫を零した。
「通信、入ってます!」とミレイナが言いアリオス、GNアーチャーと通信を繋げる。
モニターに映し出されたのは、コクピットの中に居るレーゲンとソーマだった。
その後ろには、ジュビアが腕を組んで彼らを見下ろしている。


『・・・ごめん、みんな。迷惑かけた』

「予想はしていたけれどね。とりあえず、彼の事も戻ってきてから話しましょう」

『そーっすね』


笑んだレーゲンの横と後ろで、ソーマとジュビアが何やらを言いあっている。
何故お前がついてくるだのテメェが降りろだの私の機体だだの、レーゲンを巡って口げんかをしているのが丸分かりだった。
ブリッジの空気が和んできたところで、アリオスからの通信が入った。


『スメラギさん!急いで治療の準備をお願いします!』

「アレルヤ!? どうしたの!?」

の様子が可笑しいんです・・・!』


焦りの様子が伝わってくる。
脳量子波で呼びかけても反応が無いらしい。

気絶をしているのか、それとも。

スメラギは直ぐに操舵席に座っているアニューを呼ぶ。
直ぐに反応した彼女は急いでメディカルルームへと向かった。
開いたところはラッセが素早く滑り込み、操舵幹を握る。


「各ガンダム収納後、現宙域から離脱します。レーゲン、戻ってきたらメディカルルームへ」

『了解した』


そこでプツリと通信が切れた。
ケルディム、セラヴィーを収納した後にGNアーチャーを収納する。
戻ってきたアリオスの抱えているルットーレのコクピット部分は連結部分から回収される事になった。
先にメディカルルームへ向かったレーゲンへ、ジュビアががノーマルスーツも身に着けていない事を話したからだ。
連結完了したのを見届けてから、アレルヤはアリオスを収納させる。

連結部分に来ていたソーマやティエリア、ロックオンがドアをあける。
が、そこで手が動かせなくなる。
彼女をそのまま移動させようとしたのだが、あまりの酷さに体が止まった。

無数に伸びたコードが、彼女のあらゆる箇所に突き刺さっている。

力なく、ぐったりとシートに凭れた彼女は、ジュビアの言葉通りにパイロットスーツではなく、検査服のようなワンピースを身に纏っていた。
彼女の様子にロックオンが強く拳を握る。
ティエリアは直ぐに脇にある端末を使い、メディカルルームへ繋げる。


「思った以上に酷いものだった、イノベイターの力がいるかもしれない・・・!」

『ぶちぶち千切ってもあんま害はねぇぞ』


モニターに映ったレーゲンの代わりにジュビアがそう答える。
しかし、ティエリアは眉を潜め、「あんまでは困る」と言い苛立たしげに再度口を開く。


「どうすれば良い、貴様ならどうにか出来るのか」

『今アニューが向かった。俺はこっちで受け入れ作業をする・・・』

「頼んだ」


レーゲンにそう言い、ティエリアは顔をあげた。
そこに駈けて来たのは、パイロットスーツを身に纏ったままのアレルヤだった。
の様子を見たアレルヤは瞳を見開き、悲しげに瞳を細めた。
そのまま半重力の空間を進み、ルットーレのコクピットに身を滑り込ませた。


「・・・・・・!」


顔色の悪い彼女の頬に触れる。
その様子を見守っていたティエリアたちだが、不意に彼が彼女の頬をぺちぺちと叩き始めた事に反応する。
ソーマが「おい!」と強い口調で止めようとするが、彼が発した声で思わず動きを止めた。


「おい・・・何時まで寝てるんだ、


おいこら。
そう言い両手で彼女の頬を包む。

たのむから、
ハレルヤが力なくそう言い、自身の額を彼女の額にコツンとぶつけた。


「・・・起きろよ」


まるで祈るように。

弱々しいハレルヤの姿に、ロックオンが思わず視線をそむける。
まるで見ていられない。そういうように。
瞳を細めていたティエリアが、そこである事に気付く。
コードが微かに動いた。
思わず一歩前に出るティエリアを、ソーマが訝しげに見る。
彼の視線を追ったところで、彼女もまた金の瞳を見開いた。


「・・・ど、したの・・・?」


ゆっくりと動かされた手は、彼の頭を優しく撫ぜた。
彼は金と銀の瞳をハッと見開き、思わず少しだけ離れて彼女を見つめる。
閉じられていた空色が開かれ、数度瞬く。
それを見た彼は泣き笑いの表情をし、彼女を抱き締めた。


「ア、レルヤ?」

「・・・うん、僕だよ、・・・」


背に腕を回しながらはアレルヤの肩口に顎を乗せる。
そのままティエリアたちを見、力なく微笑んだ。


「・・・ただいま、みんな・・・」

・・・!」


ソーマが彼女を呼ぶ。
ティエリアとロックオンも安堵の息を吐いて彼女を見やる。
「ああ、おかえり」とティエリアが言うと彼女は嬉しそうに笑んだ。
丁度そこに、ハロと端末を持ったアニューが来た。
いつの間にかまたハレルヤに代わった彼は「遅ぇんだよ」と言い場を譲る。
すみません、と言いアニューは端末を操作しながらコードを外そうとする。
それには瞳を丸くし、えい、と言って腕を動かした。
直後、腕に刺されていたコードはブチリと音を立てて千切れた。


「・・・な、」

「ん?」


皆が彼女の突然の行動に唖然とする中、はきょとんとした様子で瞳を丸くしていた。
アニューも口を開いたまま固まり、ティエリアたちも瞳を見開いている。


ばっ・・・!かじゃねぇのかお前は!!!

ふわっ!?


突如、脇に避けていたハレルヤがの両肩を物凄い勢いで掴んだ。
動かそうとする手を見て、直ぐにそれを押さえる。
突然の事にが空色を瞬かせていると、眉を寄せ、引きつった笑みを浮かべたハレルヤが口を開いた。


「なーにパチクリしてんだお前は・・・このコードがどんなんかよく分かってもねぇのにぶっ千切るなんざいい度胸してるじゃねぇか・・・」

「え、何でそんな・・・」

「怒るに決まっているさ!万一君の体に何かが起きたらどうするんだ!!」

「え、あ、アレルヤ・・・」


本当にもう、君は!
アレルヤはそう言いキッと瞳を鋭くさせてを見下ろした。


「勝手に抜かない!千切らない!大人しくしているんだ!!」

「え、あ、は、はい!」


絶対だからね。とでも言うように視線を向けた後、アレルヤはアニューを見た。
視線に気付いた彼女ははっとしてから端末を再度操作する。


「・・・ど、どうやらこれはデータ収集も兼ねた物のようです。ルットーレに繋がっていて、脳量子波に反応して機体を動かす事も出来ていたみたい・・・」

「意のままに操っていたって事か」

「感情に大きく左右されていそうですが・・・これで取れるはずです」


腕の部分。
アニューが言った後、直ぐにアレルヤが動いた。
ゆっくりと彼女の手を取り、コードに触れる。
アニューの言葉通りに、難なくコードは彼女の腕から離れた。


「つまりは、神経と繋がっているみたいなもんか?」

「大雑把に言えば、そうなるけど・・・」


ロックオンとアニューが会話をしている中、は掌を握ったり開いたりを繰り返していた。
そこである物を思い出し、腹部のポケットにしまっておいた携帯端末を取り出す。
損傷が無い事を確認し、安堵の息を吐く。


「・・・それは・・・?」

「あ、これ・・・ヨハンから貰った・・・」


ヨハン・トリニティ。
彼の名前がアレルヤの頭に浮かぶ。
固まった彼に、が少し慌てる。


「あ、これ、取り上げられないようにしてて・・・その、ヨハンから貰ったものだし、なんていうか・・・!」

「男の嫉妬は醜いぜ?」

「うるせぇよ」


ロックオンの言葉に反応したのはハレルヤだった。
彼は苛立たしげに舌打ちをした後、を見下ろす。


「・・・お前は物を大事にしすぎんだよ」

「勿論、アレルヤとハレルヤから貰った髪飾りも取ってあるよ?」


がそう言ったところで、全てのコードが彼女から取れた。
アニューが「終わりました」と言い彼女を見上げる。
ありがと、と言いは立ち上がろうとしたが、どうしてか中々体が上手く動かなかった。
あれ、と声を漏らす彼女を支えたのはアレルヤだった。


「・・・大丈夫、ゆっくりでいいから」

「・・・ありがとう、アレルヤ」

「いいんだ。君に触れられる。今はそれだけでも嬉しいから」


アレルヤはそう言い、彼女を支えたままメディカルルームへ向かった。





オーライザーのコクピットから出た沙慈は、格納庫の脇の一室で座り込んでいる刹那を見つけた。
先に帰還したダブルオーライザーだったが、ずっと彼らはそこに居た。
やレーゲンが戻った報せも聞いた。
それなのに、彼らは此処に居る。

俯いたままの刹那に、沙慈は一歩近付く。


「・・・刹那」

「・・・撃つつもりだった」


殺すつもりで、ルットーレを狙った。
そう呟いた刹那に、沙慈は瞳を細めた。


「・・・彼女の望みならば、仕方が無いんだと・・・」

「そんなの、悲しすぎるよ・・・」

「分かっている、汚れ役は、俺だけで十分だとも思った・・・」


けど、躊躇った。
刹那はそう言いゆるゆると顔をあげた。


を撃つ事なんて、出来なかった・・・!」

「当たり前だよ・・・!」


沙慈はそう言い刹那の前で膝を折った。
彼の深紅色の瞳は、どこか虚ろで目の前の沙慈を見ていないようだった。


「戦いは、破壊することだけじゃない。創り出すことだって出来る・・・そう言ったのは君だ・・・!」


以前、刹那が沙慈に言った言葉。
ガンダムなら出来ると信じる。
そう言ったのは刹那だった。


「思い詰めすぎたんだよ、君は・・・」

「・・・に言われた。万一の時は止めてくれと・・・殺してくれと・・・」

「約束したって・・・君が、出来る訳無いじゃないか・・・」


好きな人なんだから、
沙慈はそう言い、唇を噛んだ。
彼の言葉に刹那は瞳の焦点を彼に合わせ、力なく笑んだ。


「・・・そうだな・・・当たり前だ・・・」


彼女の過去を知った。
もう辛い事しかないのなら、いっそ楽に。
なんて彼女の事を思ったふりをして。実際は嫉妬の感情も入っていたかもしれない。
でも、何より大切な彼女を撃つ事なんて、出来なかった。

出来なくて、良かったんだ。

刹那はそう思い、項垂れた。










「名前はジュビア。見ての通りレーゲンと同じ型のイノベイドだ」


ふは、と笑いを零してジュビアは言った。
レーゲンの肩に手を置いて言う彼にトレミークルーが注目する。

の検査や治療が終わった後、ほとんどのトレミークルーがブリーフィングルームに集まっていた。
そこで先ずはジュビアの説明が行われた。
レーゲンが事の経緯を話し、彼の紹介をしようとした所で自身で自己紹介をした。
不遜な態度の彼に、レーゲンは困ったように笑いながら言葉を紡ぐ。


「・・・兎に角、俺たちに協力してくれるみたいだから」

「俺はレーゲンに協力するんだよ」

「メカニックとしての技術もあるし、結構何でもできるぞ」

「当たり前だ。上位種だからな」

「そういう言い方はするな。・・・それに、俺も記憶が戻ったさ。全部、ね」


肩を竦めて言うレーゲンにスメラギが口を開く。
「聞かせて貰っても?」と問う彼女にレーゲンは頷いた。


「・・・俺は地上で流れ者を拾い、育てるミッションがあった。データが送られてきて、計画通りに動いていたんだがな・・・」


ちょっとヘマして。
レーゲンはそう言い苦笑する。


「流れ者の介抱と一緒に俺はMSの開発もしてたんだけどさ、まぁ、ある意味嵌められたっつーか・・・」

「煮え切らねぇな。はっきり言っちまえよ」

「・・・今アロウズの上位に居る奴の望む計画とは俺は違う意見でね。拾った流れ者を兵器にする訳にはいかなかったんだよ」

「・・・流れ者とは、どういう事だ?」


ティエリアの問いにレーゲンは小さく笑む。


「そのままの意味さ。流れてきた者。俺は記憶がある間は五人介抱していた。内の三人は体を改造されたブースデットマン。
 精神操作等を中心として強化されたエクステンデッドとは違い、実験的に投薬、特殊訓練、心理操作によって身体能力が向上した奴らだ」

「そんな実験が行われていた事なんて・・・、・・・まさか・・・!?」


ティエリアが瞳を見開く。
アレルヤの隣にいたも空色を大きくした。
二人の様子にレーゲンは小さく頷いた。


「残りの二人は一人はテロメアの短いクローン。もう一人はただの女の子だったよ。
 名前はレイとフレイ。二人共、最後の流れ者へある思いを持った者達だったよ」


そう言いレーゲンはを見やる。
視線を受けたは「最後の流れ者、」と呟く。


「・・・それが、私・・・」


レーゲンは頷く。


「ブースデットマンの三人は治療が必要だったから、ずっとカプセルに入っていた。
 俺はレイとフレイを残したまま、上部の奴らによって損傷したんだ。
 最後の流れ者である君を受け取れなかったのも、記憶に障害があって、思い出せなかったから」

「そして偶々、王留美に拾われた・・・」

「そうさ。一度戻った時は既に遅かったんだ。その頃には君はもうソレスタルビーイングとしてガンダムに乗っていた。
 俺も彼らの治療とかあったし、上にもばれないようにと逃亡生活みたいなのをしてた。
 ・・・けど、二年くらい前か?とうとうばれて俺もただの"レーゲン"になっちまった。
 知らない内にソレスタルビーイングに腕を買われ、実戦部隊の内に入ったわけだが・・・」


レーゲンはを見やる。
彼女は顔をあげ、真っ直ぐに彼を見返した。


「・・・ブースデットマン・・・聞いた事があります。ヤキン・ドゥーエ戦にも投入された、生体CPU・・・」

「今はもう元気なはずさ。・・・それで、フレイとレイについてなんだけど・・・」


レーゲンはどこか言い辛そうにしている。
それに気付いたは少しだけ笑み、「いいんです」と言った。


「話してください。知らないのは怖いんです」


そう言ったを、アレルヤが見下ろす。
気遣わしげな彼の視線に、は小さく微笑んだ。


「・・・レイ・ザ・バレルはシン・アスカの友だ。友が守れなかった少女を、代わりに見守りたい」


レイはそう言っていたよ。
そう言ったレーゲンには「シン、」と記憶に残る大切な名を呟いた。
シンの友だち、薄っすらとした意識の中で曖昧だったが、恐らくはミネルヴァから脱出する時に手を貸してくれた人。


「フレイ・アルスターは直接的な繋がりは無いが・・・。キラ・ヤマトの責任を感じているようだった」

「・・・キラ・・・、ヤマト・・・?」


聞き覚えの無い名にが小首を傾げる。
そんな彼女にレーゲンは眉を下げ、「知らなくて当然だ」と言う。


「キラ・ヤマト。フリーダムのパイロットさ」

!!


フリーダム。
その一言での体が大きく震えた。





『気を付けろ!!そいつはフリーダムだ!手強いぞ!』





ベルリンの市街地で、現れた白いガンダム。

私を、ころした、ガンダム・・・!


は口元に手をあて、一歩後退る。
彼女の震える肩に、アレルヤが腕を回した。
、」と安心させるように彼女の名を呼ぶ。


「・・・ガン、ダム、私をころした、フリーダム・・・!」

・・・!」


こわい、と呟いた彼女をアレルヤが支える。
名を呼んだ声に反応し、震える瞳をアレルヤに向ける。
腕の中の彼女を安心させるように、彼は優しく微笑んだ。


「大丈夫だよ、

「・・・アレルヤ・・・」


うん、と言いはアレルヤの手を握った。
「ごめん、取り乱して」と言う彼女にレーゲンはゆっくりと首を振った。


「否、こっちも悪かった」

「レイやフレイと合流はしないのか」


レーゲンの隣に居たソーマがそう言う。
それに彼は「うーん、」と考える仕種を見せた後、困ったように笑った。


「正直、あいつらが今どう考えてどう動いてるのかわかんないんだわ」

「・・・なら、仕方ないな」

「まぁ、色々ひと段落したら俺は一回あそこの家に行かないといけないってのは確かだ」


放置してたからなー怒られそうだ。
そう言ってレーゲンは笑った。
そんな彼を見ていたソーマも、小さく笑む。


「・・・レーゲンも、ジュビアもこれからよろしくお願いするわ」


スメラギはそう言い二人を見た。
それにレーゲンは頷き、ジュビアは変わらず彼にべったりだった。
スメラギは大して気にした素振りも無く、「脳量子波は?」と問う。


「俺らがリボンズに操られる事は無ぇよ。俺らは特別なんだ。二人で一つだからな」

「ちょ、近ぇよ」


頬をくっつけたジュビアにレーゲンが嫌がる素振りを見せる。
ソーマもレーゲンの腕を引っ張りジュビアから引き離す。
二人の間に火花が散っているのを見つつ、スメラギは苦笑しつつ「それなら安心ね」と言った。

見たところ、ジュビアはレーゲンが第一のようなので離反等の心配は無さそうだ。
見張りはソーマとレーゲンに任せれば、先ず問題もないだろうし。
次にスメラギはを見やる。


「ヴェーダの位置が特定出来た事は知っているわね?」

「はい、話は治療中に聞きました」

「そう・・・私たちはまたアロウズと戦うわ。ヴェーダ奪還の為に」


貴女は、どうする?
スメラギに問われ、は小さく息を吐いた。
そして一歩前へ出、自分の足でしっかりと立つ。


「私の想いは変わっていません。みんなを守りたい、みんなと一緒に、戦います」

「・・・そう、分かったわ」


スメラギはそう言いやさしく笑んだ。
無理は駄目よ。
そう言う彼女には5年前と同じ、明るい笑みをみせた。


「りょーかいです!」


そこで一先ずは解散となった。
各々が自由に動く中、は真っ直ぐに動かないままだった刹那の前へと行った。
アレルヤと沙慈、ソーマやレーゲンは彼らを見守る。


「刹那」


が彼を呼ぶ。
顔をあげた刹那は、まるで迷子の子どものような、頼りなさげな表情をしていた。
酷い顔、とが言うと彼は瞳を伏せた。


「・・・俺は、」

「・・・ごめんね、刹那」


刹那が何か言うよりも先にが言葉を口にした。
反射的に顔をあげた刹那は、困ったように微笑むを見た。


・・・」

「私、ずっと刹那に甘えっぱなしだった」


背負わせようとして、ごめんね。
そう言っては困ったように笑った。
彼女の笑みに、刹那はこみ上げてくる思いに耐え切れなくなり、彼女の腕を引いた。


「わ、」


そのまま彼女を腕の中に納めた。
突然の事にが瞳を瞬かせていると、刹那が「良かったんだ」と呟いた。


「俺に甘えたままでも、お前が良いんだったら、良かったんだ」

「・・・刹那・・・」

「すまなかった・・・俺はお前を・・・」

「・・・刹那」


は手を動かし、刹那の背に腕を回す。
開いている手で彼の頭を優しく撫でた。


「・・・ありがとうね、いっぱい心配してくれて」


微笑んだ彼女に刹那は深紅色の瞳を丸くする。
ありがとう。
は再度そう言い微笑んだ。
そんな彼女の分かっているようで分かっていない様子に刹那は苦笑した。

今はまだ伝えられないな。
そう思いながらも、彼女が今生きて此処に居る事を喜んだ。

刹那はを抱き締めながら、一時の幸せを感じていた。




アレルヤ<●>∀<●>「アイカワラズナカガイイヨネー」
沙慈「この人怖いw」